2525sweets ~米粉フィナンシェ専門店~ 広告マンから洋菓子屋さんへ!

この春に名古屋市で米粉フィナンシェの専門店である2525sweets(https://2525sweets.base.shop/)を開店したオーナーパティシエの阪下大さん。広告マンである阪下さんが洋菓子店のオーナーパティシエを目指した理由、広告マンならではの視点を活かした開店までの経緯、そして開店から1か月の奮闘を通じて見据える今後の展望とは。

ニコニココミュニケーションズ合同会社
代表社員

阪下大

阪下大さんのプロフィール:
電通在職中は営業~ビジネスプロデューサーとして、50社以上の商品開発やクリエーティブ制作に携わる。⾷品系クライアントの担当を通じて⾷育への意識が⾼まる中、同時期に⽣まれた娘に重度の⾷物アレルギーが発覚。市販や外⾷では⾷べられるものが限られ、誕生日に家族で同じケーキでお祝いすらできないことに⾷物アレルギーに対する社会の対応の遅れを痛感する。 電通退社をきっかけに、⾷の世界で貢献したいと決意。料理教室でお菓⼦作りの腕を磨きながら、⾷育アドバイザー、アレルギー対応⾷アドバイザー、トータルフードコーディネーター等の食に関わる資格を取得。 2022年4⽉にオンラインショップ「2525sweets」を開業。⼩⻨粉・卵・乳製品不使⽤の⽶粉フィナンシェの販売を開始すると、オープン初⽇に500個が完売。2024年3月に名古屋市内に実店舗をオープン。 日々、お菓子の製造・開発を行いながら、ニコニココミュニケーションズ合同会社 代表として広告コンサルティング業を営む。東海学園大学 非常勤講師、愛犬家。

2021年よりニューホライズン第1期のメンバーとなった阪下さん。このライフシフトのきっかけは仕事よりも家族との時間を優先したいという思いからでした。そんな阪下さんにとって仕事自体も家族に関わるものにしたいと考えることは自然な成り行きです。そして阪下さんのお子さんは当時、食物アレルギーを抱えていました。 実際、小麦粉、牛乳、そして卵もアレルギーで食べられないとなると食べられるものはかなり限定的になってしまいます。特に外食に行けばほとんどのものが食べられません。そしてアレルギーは人によって重さも様々ですし、改善する人もいればそのままずっとアレルギーが改善されない人もいます。実体験に加えてそういった食物アレルギーと向き合う多くの人のケースを見聞きして、阪下さんは食物アレルギーを持っている人やその家族の食事や生活が少しでも楽しめる豊かなものになるように、食物アレルギーの人でも食べれるものを世の中に提供していきたいと考えるようになりました。 そこで食物アレルギーの仕組みについて調べながら、ニューホライズン1年目の阪下さんは教室に通い、食に関する知識を高めスキルを身に付ける、いわばインプットのための時間を過ごしました。そしてインプットを続けながら何を作っていくかについても取り組み始めた阪下さんですが、当然ながら簡単にこれだというものが見つかるわけでは無く、試行錯誤を続けることになるのです。 自分が作ったものを売って、それを事業にするために、多くの料理人は学校に通ったり修行をしたりして何年もかけて、また調理師免許などの資格も取得するケースが一般的です。阪下さんはそれを短期間で実現しようとしていました。そのためにこの時期の阪下さんは何を作るかについて分析を凝らした上での選択をすることで、短期間であっても販売に足るものが編み出せるのではないかと考えました。 その結果、技術を十分に修練する期間が無くても型に材料を流し込むという焼き菓子であれば、出来上がりの形で見劣りすることは少ないという発想に行き着いたのです。

こうして一般的には小麦粉や卵、牛乳が使われることの多い焼き菓子を、アレルギーの人でも食べられるように米粉や無調整豆乳などを使って作ることへの阪下さんのチャレンジが始まりました。 その中で当初はフィナンシェだけでなく、クッキーやマフィンなど複数の焼き菓子を販売することも考えていましたが、複数の商品を並行して作るとなるとその分余計に時間がかかってしまい事業として成り立たない、また、色々な商品を多角的に売るよりも何か1つの特化した軸がある方が消費者に受け入れられ易く事業として成り立つ可能性が高いと考え、米粉フィナンシェ専門店というコンセプトを固めたのです。広告マンである阪下さんらしい、マーケティング発想からの戦略の構築だったのです。そして、多様なレシピを参考にしつつ、数々の試作を重ね、米粉と無調整豆乳、きび砂糖、アーモンドプードル、そして油も米油を使い、小麦粉卵乳製品不使用の米粉フィナンシェを作り上げたのです。 2022年、ライフシフトから2年目の春、ついに阪下さんのフィナンシェは販売を開始します。最初はオンラインショップ限定でのスタートでした。当初は身近な人たちが購入層の中心でしたが、SNS等での情報発信を通じ、 お菓子が好きな方に加え、本当に食物アレルギーを持ってらっしゃる方や、食物アレルギーではないもののグルテンフリーの方などからの購入も増え始めていきました。そういった方の中には感想を寄せてくれる方もいて「初めての食感です」などの実際のユーザーの声も耳に入るようになりました。 このようなリアルな声をさらに聞きたいと考えた阪下さんは3年目の2023年にはマルシェに出店しました。その際には実際に食物アレルギーを抱えている方が来て「こういった商品がなかなか無い」ことを伝えて購入してくれるといったケースもありました。 このようなユーザーの声を聞いている中で、特に食物アレルギーを抱えている人からは購入して自宅に持ち帰って食べることはできるものの、お店の中で食べられないという話をしばしば耳にするようになりました。

こうした声を受けて食物アレルギーを抱えている方がアレルギーの無い人とも気軽にお茶のできる場所という意図を込めて阪下さんは2024年3月に2525sweetsの実店舗を名古屋市の中区新栄、かつて阪下さんが広告マンとして通っていたクライアントのビルの向かい側に開店しました。この時もやはり広告マン時代の経験は、告知・PR活動は勿論、見積書を読み解き店舗の開設に際して余計なコストを抑えることができるなど多方面で大きく役立ったのだと阪下さんは語ります。

開店後も一筋縄にはいかないのが飲食店です。当初はフィナンシェの販売だけでは物足りないだろうという見立てもあり、お茶のできる場所としてのイートインスペースでの店内利用が営業の軸になると想定していたものの、実際にはその逆で、開店当日には持ち帰りの方ばかりで商品が2時間で完売するなど、現時点では購入者の圧倒的多数が持ち帰りの方となっています。このようにフィナンシェが盛況な中で次はイートインスペースを活用してもらうための戦略を練りつつ、こういった想定外が起こるのも当然のこととばかりに阪下さんは先を見据えます。

阪下さんの目指す将来像は長く地に足を付けて、食物アレルギーの人が楽しめる焼菓子を提供し続けることです。そのために、食物アレルギーを持つ人が訪れることの多いヴィーガン向けのイベントである名古屋ヴィーガン祭りへの出展を予定していたり、新たに名古屋市の中心部にできる大型商業ビル内での2525sweetsの商品の委託販売を始める、オンラインショップを利用する遠方の方向け情報発信を充実させるなど、食物アレルギーを持つ人たちとの接点づくりを軸に置きつつより多くの消費者との接点を設けながら2525sweetsを育てていこうとしているのです。

<プロフィール>

阪下 大(さかした だい) 電通在職中、営業~ビジネスプロデューサーとして、50社以上の商品開発やクリエーティブ制作に携わる。⾷品系クライアントの担当を通じて⾷育への意識が⾼まる中、同時期に⽣まれた娘に重度の⾷物アレルギーが発覚。市販や外⾷では⾷べられるものが限られ、誕生日に家族で同じケーキでお祝いすらできないことに⾷物アレルギーに対する社会の対応の遅れを痛感する。電通退社をきっかけに、⾷の世界で貢献したいと決意。料理教室でお菓⼦作りの腕を磨きながら、⾷育アドバイザー、アレルギー対応⾷アドバイザー、食品衛生責任者等の食に関わる資格を取得。2022年4⽉にネットショップ「2525sweets」開業。⼩⻨粉・卵・乳製品不使⽤の⽶粉フィナンシェの販売を開始すると、開業初⽇に500個が完売。「美味しくてびっくり!小麦アレルギーの子供がパクパク食べていました!」と喜びの声をいただく。2024年3月にはイートインスペースも備えた米粉フィナンシェ専門店を名古屋市内にオープン。食物アレルギーの有無に関わらず、同じお菓⼦を楽しく美味しく⾷べられる時間と場所を提供すべく、日々、お菓子の製造・開発を行う。 ニコニココミュニケーションズ合同会社 代表。広告コンサルタント、東海学園大学 非常勤講師、パティシエ、シングルファーザー、愛犬家。

ライター河合 洋一