2024.07.05

大人の修学旅行で学ぶ「教え」と「歴史」。LSPサークル紹介「仏教サークル」

ライフシフトプラットフォーム(LSP)の様々な活動の中には、メンバーが中心となって運営するサークル活動というものがあります。同じ趣味や嗜好を持ったメンバー同士が集まり、楽しく交流し、時には新しい発見を求めて探索の旅に出かけたりもする。今回はその中で「仏教サークル」を取り上げたいと思います。サークルマスター(サークルの発起人)の新倉昭彦さんの呼びかけで現在15名ほどのメンバーが集い、仏教の成り立ちに触れたり、宗派を超えた視点での多様な語り合いがなされているそう。ちょっと覗いてみたいと思います。

オフィスファーストペンギンズ代表 / 一般社団法人ムドラー・ジャパン代表理事
個人事業主 (IC:インディペンデント・コントラクター)、オフィス ファーストペンギンズ 代表、一般社団法人 ムドラー・ジャパン 理事、プロフェッショナル・エグゼクティブ・コーチ、キャリア・コンサルタント、組織開発ファシリテーター、ファンドレイザー

新倉昭彦

新倉昭彦さんのプロフィール:
60歳の定年退職直前に、65歳までの継続雇用か、それとも独立してニューホライズンコレクティブ合同会社(NH) に参加かで大変悩みましたが、人生100年時代と言われる現代にあって人生の二毛作・三毛作をめざしてより豊かなセカンドキャリアを築きたいという思いが強く、NHに参加しました。①NHプロフェッショナルパートナ―②ビジネスコーチ③キャリアコンサルタント④大学非常勤講師⑤中小企業顧問⑥組織開発アクセラレーター(組織活性化推進支援)⑦ファンドレイザー(社会課題解決を目指す組織のための資金調達)⑧出張バーテンダー(予定)、と様々なことをしています。

きっかけはタイとインドでの発見

新倉さんが初めて仏教に興味を持ったのは、電通マンとしての海外赴任時代のある出来事からだと話します。赴任地だったタイは仏教への信心の大変厚い国だという事は知られていますが、現地の男性は必ずある年齢に達すると一度出家して3か月ほどお寺で修行を積むそうです。そんな環境の中、新倉さんの当時のクライアントだったある日本人の駐在員が、自分も現地の慣習に倣い出家をしたいと言い出したのだとのこと。新倉さんは驚きながらもそのための出家儀式のビデオ撮影係を拝命したそうです。 「彼の出家の過程を収録しながら思ったのは、タイではとにかく仏教が生活の中にごく自然に溶け込んでいるということでした。そしてこの国がとても安定しているのは、仏教の存在が極めて大きいのだということを感じました」 と当時を振り返ります。 数年後、新倉さんはインドへ赴任先を変えますが、そこでもある発見がありました。現在はヒンドゥー教の国と知られていますが、もともと仏教はインドこそが発祥の地。そこでいろいろと調べているうちに、現在のインド仏教界の頂点にいる人が日本の僧侶※1であることを知ったのです。 「仏教の発祥の地での最高責任者が日本人であるということを知らなかったので、まず驚きました。また彼の布教の功績でインド内の仏教徒がこの50年で飛躍的に増加したことなどを聞いて、日本人が仏教に関心を持たないこと自体がなんかもったいない気がしてきたのです」 この二つの出来事を大きなきっかけとして、以来新倉さんの趣味・興味関心は、仏教を学ぶことになりました。直近では東京国際仏教塾というスクールにも入塾、様々な宗派・宗旨の知識を得る過程を経、最後は曹洞宗の在家得度まで行ったそうです。 LSPでのサークル立上げを思い立ったのも、そんな流れの一つでした。 「LSPメンバーには、実際の僧侶の方がお二人いらしたことも知っていたし、興味を持ってもらえる人も多いんじゃなかと思ったんです。案の定、声を掛けたらお二人を含む15人ほどの有志が集まってくれました」 ※1:佐々井秀嶺氏。インドで活動する日系インド一世。40年以上にわたり、カースト制最下層で差別を受けている人々の解放と仏教復興運動に命を捧げる僧侶。 (以下写真:長谷寺の登廊をつたい朝のお務めに向かう)

サークルの常のお務めは

では通常サークルはどんな活動をしているのでしょうか。 「毎月1回の朝の会合では、担当のメンバーをあらかじめ決めておいて、15分くらい自分の好きなことを話してもらうんです。たとえば節分が近い季節だったら、節分ってそもそも何だろう、とか。僕がよく話すのは明治以降の近代仏教の歴史や、ビジネスマンの手によって経営を立て直した有名なお寺の話とかですかね。そんなことを本を読んで調べて、みんなに共有します」 またそういった語り合いをサークルという形を通して行う醍醐味について、新倉さんは以下のようにも語ってくれました。 「やはり一人で勉強するよりも、みんなで興味を重ね合わせていくことによって広がりが出ますよね。たとえば僕は神道のことはあまり考えていなかったんだけれども、けっこう神社にも関心がある方が多かったりして、日本の宗教を考える時にはやっぱり両方とも考え合わせないといけないんだと気づくんです。お札やお守り、御朱印、、、そういった仏教の教えではない部分にも意識が向くのです。古墳に興味があって千カ所近く訪れているメンバーもいます。それとやはり大きいのはメンバーに実際の住職の方や僧侶資格を持っていらっしゃる方がいることですね。お経の内容を紐解いてくれたり、様々な仏教的お作法のことを語ってくれたりしてとても面白いんですよ」 と、新倉さんのお顔は終始ほころぶのです。 (以下写真:智積院)

大人の修学旅行「奈良・京都」編

さて、この仏教サークルの活動の一つの目玉というべき「大人の修学旅行」についてご紹介しましょう。春と秋の季節の良い頃に年3回ほど実施されるそうで、その規模により「修学旅行」と言ったり「遠足」と呼んだりするそうです。直近では2024年5月に実施された奈良・京都の修学旅行がありました。 実施にあたっては、それぞれ奈良と京都に非常に造詣の深い二人のサークルメンバーが役割を分担し、綿密なコース設定を行ったそうです。これまたメンバーの有志が作成した「修学旅行のしおり」を見ると、写真や解説が満載で、その豪華さと内容の濃さに驚かされます。奈良での予定表には「室生寺の宝物殿、奥の院を散策」、「室生龍穴神社」、「長谷寺での朝の勤行」。京都では「真言宗智山派総本山・智積院にて朝のお務め」など、いかにも仏教サークルらしいメニューが並んでいます。 その一方、京都編の中に一見仏教とは関連性のない「先斗町歌舞練場での鴨川をどり観劇」「鴨川川床・夜の宴」といった花街系の艶っぽいコンテンツもありました。 気になって筆者は京都を担当したメンバー・佐藤映仁さんにもお話を伺いました。 佐藤さんは仏教サークル立上げ時から新倉さんの相談を受けつつ参加した初期メンバーで、自らも真言宗の結縁灌頂(けちえんかんじょう)※2を受けている方です。 「花街と仏教とは直接は関係ないですよね(笑)。ただですね、先斗町だけかもしれませんが舞妓さんが成人になると、お寺でお祝いをしていただけるようなんですよ。お昆布式と言いましてね。たまたまなのですが私の菩提寺の総本山でもある智積院で、娘も成人のお祝いをしてもらったんです」 なんと、お話を伺うと、佐藤さんのご長女は今京都で舞妓さんをされているそう。だからこそ京都の花街にも土地勘を持っていらっしゃるのだと筆者も合点がいきました。 佐藤さんが語る仏教サークルの楽しみは、仏教や神道といった日本の宗教が長い歴史の中で、その地の政治、文化や習俗とどのようにかかわってきたのかを知ることだと言います。その大きな流れの中では花街もけして仏教と無縁ではなく、互いを支えあってきたのだということなのでしょう。このツアーを通してそのような学びを得ているとするなら、まさにそれは「大人の修学旅行」なのだと感じました。 「京都編締めくくりの智積院・朝のお務めでは、迫力ある不動明王像の前で、炸裂する太鼓の音とともに僧侶だけでなく参加者全員で般若心経を唱えるんです。次第に高く燃え上がる護摩供養の炎を眼前にして、気づいたら体も上下に揺れ始めて、なんていうかヘビーメタルの世界(笑)。気分が高揚していくんです!」 来年以降も是非、形を変えてこのツアーを実施したいと楽しそうに語ってくれました。 ※2:仏縁を結ぶ真言密教の儀式。諸尊の上に信者が花を投げ、当たった仏が自分の主尊となるとされる (以下写真:鴨川納涼床)

即今当処自己

サークルマスター新倉さんとのお話に戻します。 氏にとって仏教を学ぶということはどういったことなのでしょう?という問いをインタビューの後半に投げかけてみました。 「死生観というか、齢60過ぎにして初めて自分がどう生きるかを勉強してるって感じですね。僕が座右の銘にしている禅の言葉で“即今当処自己(そっこんとうしょじこ)”という言葉があります。つまり、今から、此処から、自分から、です。過去を引きずるのでなく、未来に不安を持つのではなく、今を大切に生きなさいという教えです」 もともと仏教に興味があったわけではなく、海外赴任での経験や日本ではありえない現地の社会課題を目の当たりにする中で、次第に仏教の世界に入り込んできたという新倉さん。 「今後サークル活動は、広がりと深掘りを目指したいと考えています。広がりという意味ではもっとメンバーを増やし関心の幅を相乗的に広げたいということですね。深掘りについては例えば廃仏毀釈※3に始まる近代仏教の変遷やあり方についてもっと学びたい。これはとても深いものがあります。また今後30年以内に30%のお寺がつぶれてしまうみたいな話がある中、我々のようなビジネスの世界で生きてきた人間が何かできることがあるんじゃないか、とも思うのです。最終的にはそういった支援もこのサークルでできたらいいですね」 と、思いを紡ぎます。 ――最後にこれから入会を考えるメンバーにひと言いただけますか? 「とにかく、ゆるーいサークルなのでお気軽にご参加ください。それと…」 一拍おいて 「仏教を知らないのは損してますよ、とお伝えしたいですね(笑)」 と話す新倉さんの仏様のように穏やかな笑顔が、とても印象的でした。  (了) ※3:明治政府によって行われた神仏分離政策。神道が保護され、仏教が排斥された。