鶴留さんが主に取り組んでいるビジネスモデルは、地方新聞社が地域で築いてきた信頼性が損なわれることのない社会性の伴う商品を選定し、人的ネットワークに基づく営業網やメディアなどのリソースを活用して販売を推進するというものです。 具体的には、全国の各地方新聞社にはそれぞれの地元地域においてきめ細かく強固な人的ネットワークが構築できています。加えて鶴留さん自身が今日まで築いてきた人的ネットワークなども活用し、地方新聞社が持つ社会性・公共性などと相容れる商品を見出すことがビジネスモデルの第一歩目となります。そして見出された商品は精査され、地方新聞社の営業網を活用した販売が可能かを吟味します。 このようにして吟味され、厳選された商品を全国の地方新聞社に紹介し、販売意向を持った地方新聞社は新聞広告などの営業活動の際や紙面・自社サイトなどのメディアなどを通じて販売を行います。 このようにしていずれかの地方新聞社が見つけた価値のある商品が精査を経て全国の地方新聞社を通じて世の中に広まるという拡散モデルなのです。
2025.04.10
地方新聞社の新たな収入源づくり
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電通の前身である電報通信社は、全国の地方新聞社に記事と広告を提供するビジネスモデルによって、地方新聞社と共に成長し、後の電通の礎を築いたといわれています。この様に100年以上にわたり電通のパートナーである全国の地方新聞社を電通勤務時代に新入社員からおよそ四半世紀にわたり担当してきた経験を持つライフシフトプラットフォームメンバーが鶴留伸二さんです。 自身の社会人・電通人としてのキャリアを全国の地方新聞社と共に歩んできた鶴留さんは、ライフシフトの主目的として、ビジネス環境が変化してきている全国の地方新聞社のその特性を活かして、新聞外収入に積極的に取組む地方新聞社をサポートすることを挙げています。
このような拡散モデルで販売を行っている具体的な商品には次のようなものがあります。 まずは、自然災害の脅威にさらされやすい日本において、いざという時の備えのために重要視されている防災食・備蓄用のおむすびの販売です。従来広く流通されている備蓄おむすびは、食べる際に別途水や火を必要とします。しかし、昨年の能登半島地震の際のように水道網が遮断されてしまうと、従来の備蓄おむすびは水分の無いパサパサなものとなってしまい、そのまま食べると逆に体内の水分がおむすびに吸収されのどの渇きを感じてしまうといった弊害や、実際にウーロン茶やジュースを使ってご飯を炊いたといったケースも報道されていました。また、災害に伴う避難時の懸念事項の一つにアレルギーがあります。避難生活中にアレルギー症状が発症してしまうと十分な医療支援が受けられないというリスクがあるものの、災害避難時にアレルギーの有無に応じて異なる食事を提供することは容易なことではありません。 鶴留さんが取り扱っている備蓄おむすびはこの2つのリスクに対応しています。予めご飯が炊いてありパッケージを開けたらそのまま食べられる状態で5年以上の長期保存が可能であるため、万一の断水や交通網の遮断などでなどで飲料水が手に入らない場合でもおむすびを食べることが可能です。また、アレルギー物質28品目を使用していないおむすびであるため、アレルギーを持つ人でも安心して食べることができるのです。加えて塩、しそ、わかめの3種類のラインナップが揃っているため、避難生活が続いても味のバリエーションが伴う備蓄おむすびとなり、実際に災害発生時などの厳しい環境下での出動を余儀なくされる可能性がある海上自衛隊でも採用されているほか、地方新聞社を通じ、各地の地方自治体や防災関連の民間企業などでも採用の動きが進んでいます。

また、愛媛県の特産品である今治タオルの販売サポートも行っています。全盛期には500社以上あった今治タオルの生産者も現在では70社ほどにまで減少しています。日本が世界に誇るブランド商品である今治タオルの振興のために愛媛県の関係者から持ち込まれた相談をきっかけにメーカーとの直接取引を実現し、それによって原価に近い販売価格を可能にすることで、企業のノベルティやイベント事業での活用など様々なチャネルで今治タオルの流通を促進しています。 最後に、青森県・弘前大学等発の機能性表示食品の認可も受けているあおもりプロテオグリカンという健康食品です。青森県として普及に力を入れている商品で、地元地方新聞社である東奥日報社を通じて鶴留さんに相談があり、全国の複数の地方新聞社のリソースを活用し、ECサイトでの販売をはじめとする小売販売体制を構築しています。

その他にも100%ペットボトル再生布を活用した環境にやさしいファブリック広告や、世界で唯一のステイオンタブ式飲料缶の水素水など、社会性が伴うもしくは地方創生に繋がる商品という観点に見合い、地方新聞社の持つ公共性を損なわない商品を厳選して取り扱い、これからも全国の地方新聞社と協業しながら社会に貢献していくというライフシフトを進めて行きます。
<プロフィール> 鶴留伸二 新規事業開発のニーズのあるメディアに対して、 具体案の提案・サポートに取組んでいる。 ここ数十年映画を50~100本/年、 ミシュランビブグルマンのお店を現状約100軒、 北海道・沖縄以外は自家用車でまわっている。 1966年鹿児島県出身、平成元年株式会社電通入社。
ライター河合洋一