なにやら空前のサウナブームですね。
「朝活」や「婚活」、それに「腸活」「パパ活」「終活」などに並んで人気活動の仲間入りをしてきたのが「サ活」。
言わずと知れた「サ活」=サウナ活動ですが、サウナ通やサウナ愛好家たちに言わせると、定期的にサウナに通い、サウナ入って、水風呂に飛び込んで、外気浴をする、という温冷交代浴をすることが「サ活」なのだそうで、いわゆる「ととのう」とは、サウナ→水風呂→外気浴を繰り返し行うことで得られる多幸感や恍惚感、そして最終形でリラックスをした状態になることをいうそうです。
この、サウナで「ととのう」というコトバの生みの親とも言われている、公益社団法人日本サウナ・スパ協会公認のサウナ大使という肩書を持つマンガ家タナカカツキさんの漫画『サ道』でも、登場人物はみなあちこちのサウナで「ととのって」、幸せに包まれて帰って行きます。
サウナの活用の目的や入り方、期待する効果などは、人それぞれですが、この「ととのう」までの一連の行為、みなさんここで目的を達成して満足している人がほとんどでしょう。
ところが、サウナ発祥の国、北欧のフィンランドでは、ちょっと違うようです。
合同会社NUTMEG
アートディレクター、プロダクトデザイナー、シンガポール料理研究家
田中友規
田中友規さんのプロフィール:
料理とデザイン
漬物とデザイン
シンガポールとデザイン
かけあわせたらなんでも新規事業
サウナを作ってしまったひと
本場フィンランドスタイルに魅了され、この春、地元大阪にサウナを作ってしまったのが、
今回の主役であるNHメンバー田中友規さん。
田中さんはもともとプロダクトデザインと料理に関することを中心に活動していたところ、最近になって不動産業にも興味を持ち、倒壊寸前の2階建ての古民家を安く購入し、キッチンに特化した物件に改築。
しばらくの間、そこを賃貸物件として出すも、思っていた客層とは違う人が借りていたこともあり、なにか面白さに欠けるなーと感じ始めた頃、ちょっと落ち着く4畳半のスペースに、空が抜けるいい感じの2階のバルコニーかー、、、って、ここでふと自分がサウナ好きであったことを思い出し、そのとたん、不動産に、料理とサウナがくっついて降りてきて、ボソッと声に出して言いました、
「そっか、、サウナか!」
「たっぷり汗をかいたあとに食べる料理は、なんでも美味しく感じる。
サウナに入った後に、ぼくのカレーを食べてもらえるような空間にしよう!」
フィンランド視察ツアー
サウナを作ると決めてからは、すぅーっとレールが敷かれたように、きれいにコトが繋がっていきます。
以前、カレーを作りたい!なら修行に行かねば!と行った先はスリランカ。
そして今回は、サウナ作りだから、本場フィンランドに行かねば、と早速ネットで検索。
すると、フィンランドでひたすらサウナを巡るという8泊9日のパッケジツアーが、コロナが落ち着いて今年から再開することになっており、よくよく調べてみるとそのツアーの添乗員が、なんと高校の同級生の池田晶紀さん。しかも、マンガ家タナカカツキさんとお知り合いと発覚。普段はカメラマンをしているという池田さんとの久々の再開も果たせることも期待し、2月のツアーに金額も見ずに申し込む。2年ぶりの開催とあって、サ業界では名の知れた面々など含め、総勢約20名の愛好家が参加。
一日に数軒ハシゴするという、とにかく朝から晩までサウナ三昧の行程。
中でも一番印象に残ってるというのが、ヘルシンキ市内にある決まった管理者のいない民営のサウナ。
ここはお客さんたちからの寄付で成り立っており、入館料はタダ。どこからともなく集まったサウナ好きが勝手に作り、サウナ好きのひとたちによって勝手に運営されているという、決してゴージャスではないけれど、どこかホっとできる素朴な作りの小屋。
その日は朝5時のまだ暗いうちからもうすでにおじさんが一人サウナに入っており、日本からゾロゾロと押しかけた一行のために快く蒔をくべてくれたそうです。
自分たちが入り終わった後は、次の人のために、火の準備をして出ていくのがここでの暗黙のルール。
サウナを愛する国フィンランドだからこその、サウナ好きがサウナ好きのためにお互いにマナーを守って管理し、受け継がれている、とても気持ちの良いサウナだったそうです。
フィンランドには、街の至る所にさまざまなスタイルのサウナが多数点在しており、人口540万人に対し、なんとサウナの数は200~300万個。また、サウナには精霊のようなものが宿っていると言われるほど、フィンランドの人々にとっては、神聖な場所であり、かつては出産の場所として高熱で滅菌したサウナを使っていたという、まさに生まれた時から親しんでいる場所でもあるのです。
大統領もサウナに入りながら海外からのお客様との外交を行ったり、企業は取引先との商談をしたり、またある時には、親子喧嘩や夫婦喧嘩をしてしまったあとの仲直りの場所としても一役を担っているこのサウナ。「大事な話はサウナで」ということわざもあるほど。
一方、フィンランドはこれまで、原因は人それぞれですが、メンタルに不調が現れ、自ら命を絶ってしてしまう人も少なくありませんでした。そのため、精神疾患やメンタルヘルスに対する治療も進んでおり、さまざまな取り組みの成果もあって、1990年をピークに自殺率が低下してきているそうです。 40年以上前にフィンランドの精神科病院で開発された「オープンダイアログ(開かれた会話)」という治療手法がありますが、これもサウナで行うと、良い結果が出たそうです。うす暗いサウナには精神を落ち着ける作用もあり、メンタル治療に適してるというわけです。
こうしてみると、日本での「ととのう」ブームで、純粋に遊びとしてサウナ時間を楽しむ、ということではなく、フィンランドではファーストサウナはゼロ歳という人もいるくらい、サウナは生まれた時から生活に密着しており、リフレッシュしてリラックスした状態であるからこそ話せる。密室で裸の付き合いであるからこそ心の距離も近づき、素直になれて言いたいことも言える。高温のため意識が自分に向き、頭がすっきりして整理される。
決して「ととのう」ことが目的ではない、その先にあるもののために存在しているのです。
フィンランドのサウナツアーで、身をもってその体験をしてきたからこそ、日本人の特性である情報を先にインプットし、それを確かめに現地に行くという、ただ「ととのう」ということを経験しに行くだけのサウナではないサウナを作る!
フィンランドでの最後の夜、田中さんは外気浴をしながらそう決めたそうです。
写真上:右のポッチャリが田中さん、左のちょっとポッチャリが同級生であり添乗員の池田さん
写真下:DONATE(寄付してぇー)の看板
大阪に戻って
大阪・東南エリアに位置するベッドタウン平野区の難読駅のひとつである大阪メトロ谷町線の喜連瓜破駅(きれうりわりえき)。
昔、神様が瓜を割って出てきたという言い伝えのあるこの地で、ことし5月、古民家をリノベーションした1日1組限定の実験的なサウナ付モデルルームをオープン。以来、サウナが家にある生活を体験するために「SAUNA & CURRY URI」は連日予約客で賑わっている。古民家サウナが気に入った利用者には、自社で開発しているサウナ付の物件への引越し等の斡旋を行なっている。
ここの瓜(売り)は、水温8度まで冷やせる水風呂。
そして、お腹がすいたらチンしてすぐに食べられる冷凍庫にあるスパイスカレー。メニューを開発したシンガポール料理研究家でもある田中さん自ら手作りで仕込みます。
ここでも田中さんの不動産屋的な思考がピピピと働き、冷凍庫は不動産賃貸物件のようなものと捉え、今後は、有名店とのコラボレーションカレーを置くかも、と。
サウナ、水風呂、バルコニー、ベッドまで用意されているこのSAUNA URI。
最大4名、15時から23時まで利用できるから、ゆったりした時間で、家族でもカップルでも友人同士でも、そしてフィンランド式に大切な取引先のお客さまとでも、リフレッシュしてリラックスして、距離が縮まって、良い話ができ、良い関係が築けたらいいですね、と田中さんは全身に大粒の汗をかきながら話してくれました。
写真上:外観(中央の黒い建物)
写真下:サウナの中
「SAUNA & CURRY URI」
大阪市平野区瓜破2−3−47
https://www.saunauri.com/