神さんは現代の子供たちについて、色々な物や情報が溢れている時代であるものの、自然に触れたり、自然から自分たちがどのような恵みを得て日頃の生活を行っているのかを実感する機会が少ないことを課題と考え、それは都会であっても地方であっても共通していると感じていました。 そこで、松崎町の自然が育む地域資源を活用した本物の自然の恵みに触れることでこの課題を解決するきっかけを創出していきたいと考えて、今回の「自然の恵みをいただきます」プロジェクトを立ち上げました。
2024.02.15
自然の恵みをいただきます
自然の恵み豊かな静岡県松崎町に移住し、地域資源を活用して地元や都会の子供たちが本物の自然の恵みを実体験できる機会を地域ぐるみで創出する「自然の恵みをいただきます」と銘打つ取り組みを行っているニューホライズンメンバーが神健一さんです。
里山Base
ビジネスプロデューサー
神健一
SNS
神健一さんのプロフィール:
静岡県で一番人口の少ない町、伊豆の松崎町に移住。過疎の町で地域と向き合い、都会と地域を結ぶハブとして地域の活性化のために活動中。
「自然の恵みをいただきます」プロジェクトは、2回のプログラムで構成されていて、2023年秋に静岡県の松崎町と東京都の人形町で実施しました。参加者は都会と松崎町に住む小学1年生~4年生とその親御さんです。 1回目の静岡県松崎町でのプログラムは2023年10月21日(土)・22日(日)に実施しました。 初日には耕作放棄地を減らし、美しい田園風景の復活を目的として活動している松崎稲作塾の協力の下で稲刈り体験を実施。実際に鎌を使って稲を刈ってみたり、農機を使っての稲刈りも実施することで普段から食べているお米の収穫を実体験しました。その後、夜には参加者と現地の方とで地元の名産物などをいただきながら交流しました。
そして2日目は、林業・農業の分野から環境保全と持続可能で豊かな社会の実現を目指している丸高ティーティーの協力の下、どのように木が伐採されているかについて学び、実際にのこぎりを使い自らの手で木の伐採も行う木こり体験を実施しました。
その後は子供たちに未来を自ら切り拓くチカラを育む出張授業である「きかくのがっこう」の授業を行いました。変わりゆく時代の中で、自ら考え、自ら動き、他者を巻き込みながら、自分ならではの新しい正解を作る「企画」を養うことを目的とする取り組みです。「雨の日が楽しくなるには?」など、正解がないことに対して子どもたちなりの答えを出すことを通じて、子どもたちからも積極的な発言が見られ、最後は親御さんへのプレゼンテーションも実施しました。
2回目の人形町でのプログラムは2023年11月25日(土)・26日(日)に実施しました。 初日はうなぎ三好での職場体験を行い、生きている状態のうなぎを捌く様子に子供たちは興味津々。いろいろな質問がでました。
その後に2度目の「きかくのがっこう」も実施。松崎町での前回以上に発言することに積極的な様子も見られ、アイデアを考え表現することが楽しかったという感想が、子供たちから次々とあがりました。中には、将来の夢やなりたい職業を語り始める子どももいて、多いに盛り上がった授業となりました。
翌日の2日目は、松崎工房の協力の元、松崎町で伐採した木を使ってお箸作りを体験。その後、松崎町で収穫した全国でも栽培者が少ない希少な緑米のもち米で餅つきを行い、子供たちは自ら作ったお箸を使って自らついてできたお餅をいただくという体験をしました。
全2回のプログラムを通じて、自ら伐採した木材で作ったお箸で、自ら収獲したお米でできたお餅を食べるというプロセスを通して、子どもたちに自分が普段から食べているものがどんな場所で、誰がどのような思いで、どのように作っているかを体験し、それを支える豊かな自然について考える機会を提供するプログラムとなりました。
神さんはこのように子供たちが自分で伐採した木材や収穫したお米でお箸を作ったり、お餅をつくといった、本物の自然や、その自然から得られるものに実際に触れる体験を通じて、自然からどのようなものを得ているのかを実感し、それこそが自然から贈られる恵みの一つであるのだと伝わることを目指しています。 そしてこの取り組みを都会に住む子供たちと地方に住む子供たちの混成メンバーで体験することで、都会でも地方でもそれぞれの土地だから体験できるものがあることを実感したり、日頃の生活圏外の子供たちとの交流が生まれて子供たちの生活や視点の幅が広がることも目的の一つとしています。 この取り組みを実際に行って神さんが実感したことは、子供たちはすぐに初対面の子供たち同士でも仲良くなれるということでした。そしてこのちょっと特別感があり新しい友達たちと共に体験したイベントが、子供たちの記憶に残り、今ではなくやがて将来、あの時の体験が自然の恵みをいただく体験であったことに気づいたり、関心を持ってもらえることに意義があると考えています。 また、趣旨に賛同し、地域資源の活用のために協力してくれた地元の事業者たちからも、今後も地域資源を使って子供たちのために何かできることは無いかといった声を頂けたという点でも地域の活性化、地方創生の一翼を担えており、このことも神さんにとって価値のある取組と言える理由の一つとなっています。 こうした機運を踏まえ、今後も子供たちが松崎町の地域資源を活かした本物の自然の恵みに触れる機会の創出というテーマをさらに発展させていこうとしている神さん。 そのベクトルの一つは、更なる地元の巻き込みによる地域創生、活性化の促進です。松崎町には農林資源だけでなく水産資源などの他の地域資源もありますので、より広く地域資源を活用することで、より魅力的で松崎町ならではのコンテンツに昇華させていきたいという意欲を持っています。 そしてもう一つのベクトルが子供たちへの本物の自然の恵みに触れる機会の作り方です。地元の子供たちと都会の子供たちとの交流は、子供たちの世界を広げるためのファクターとして、また地方と都会のそれぞれの場所だからできることを体験してもらうためにも重要なファクターと考えている神さん。今後、本物に触れることの価値がより強く認識してもらえるようなアプローチを子供やその保護者、更に教育関係者に対しても如何にして行っていけるかを模索しています。
<神 健一(こう けんいち)さん> 「巻き込み力」と「巻き込まれ力」を併せ持つ地域活動家。21年間勤めた株式会社電通を退社後、2021年1月末に静岡県で一番人口の少ない町、松崎町に移住。縁もゆかりもなかった松崎町で地域と向きあい、地域活性化のために奔走中。伊豆まつざき田舎暮らしサポート隊(松崎町移住定住促進協議会)隊長、田んぼをつかった花畑実行委員、地域交流稲作体験「NH田んぼプロジェクト」プロジェクトマネージャー、子育てあれこれ座談会in松崎町運営代表、伊豆in賀茂6アドバイザー、伊豆開国手づくり市サポーターなど。 丸高ティーティー株式会社農林事業部 https://www.marutakatt-norin.jp/ 松崎稲作塾 https://izumatsuzakinet.com/inasakujyuku/ 一般社団法人松崎工房 https://matsuzaki-factory.localinfo.jp/ 株式会社きかくのがっこう https://kikakunogakkou.studio.site/
ライター河合 洋一