フードビジネスサロンによる麹づくりワークショップ

ライフシフトプラットフォームではテーマ別に複数のサロンが開設されています。その中の1つがフードビジネスサロンです。フードビジネスサロンは月に1回のビジネス推進を目的としたメンバー同士の情報交換会と不定期に実施する有識者によるオリジナルセミナーで構成されています。既に食品物販やプロデュースなどのフードビジネスに関わっている、あるいはフードビジネスや食、飲食マーケティングに興味のあるライフシフトプラットフォームメンバーを対象に、メンバー同士の知見や人脈、ノウハウを共有しながらメンバー個々のビジネスの発展と共にメンバー同士のコラボレーションによる企画提案などにもチャレンジすることを目指しています。

ベラジャルデーノ  Bela Ĝardeno
コンサルタント、プランナー

川井美奈子

SNS

川井美奈子さんのプロフィール:

「各地のそれぞれの小さな美しい活動を応援する」ことをトライしています。原始布と呼ばれる、木綿の普及以前の葛や大麻の繊維からの布・服飾品や、発酵食品の活用、不耕起・無肥料で多種の植物を植え生物多様化が進む健やかな協生農法などに興味があり現代生活への普及を試みています。目先の効率が大変悪く感じられますが、今までと別発想で乗り越えると豊かに生き延びるイノベーションになると信じています。都会暮らしの人が、地面から命を育むことを体験できる、都会の庭園づくり(田舎ももちろんですが)、エディブルスクールヤード普及を試みています。

今回は発酵デザイナーとして活動している小倉ヒラクさんを招いて開催された麹づくりワークショップに潜入しました。下北沢にある小倉さんがプロデュースする発酵デパートメントに隣接するシェアキッチンで開催された今回のワークショップは、実際に米麹を作る仕込みを行いつつ、その合間の時間に麹についての知識を深める座学も行うというものでした。

このワークショップを発案したサロンメンバーの川井さんは「メンバーの皆さんでセミナー案を持ち寄るにあたり、今自分が勉強中の麹のことを共有したいと思いたちました。発酵や麹は日本にとどまらないブームですし和食のアイデンティティの一つで、抹茶カフェ、国産オーツ麦のミルク、アレルギー対応の焼き菓子、スパイスなどの持ち寄りマルシェなど、メンバーの様々な取り組みどれでも関わりが持てそうです。そこでこの機に『発酵文化人類学』という著書があり、発酵デザイナーという肩書で世界中でワークショップをされたり『発酵デパートメント』という発酵食品の聖地のようなお店を運営されたりと多彩な活動をされている小倉ヒラクさんに思い切ってコンタクトしてみました。自ら指導のもと麹をつくる体験ワークショップをしていただけるということで、皆さんとじかに麹に触れながら、小倉さんの広く深い知識や対話を楽しめたら、と当日を迎えました。」と今回の開催意図を語ります。 米麹の仕込みでは、まず米を重さが約30%増えて色が白くなる状態になるまでしっかり水に浸しつつ表面の水分をしっかり切ること。次いでしっかり米を蒸すこと、こうすることで米がグミのように弾力が備わりつつベタベタしてくっつくことのない状態に仕上がるという事を実演しました。 この状態になった米をほぐしてバラバラにした上で麹菌をまぶし、発酵しやすい状態を作るところまでが当日の実習内容となっており、そこから約2日間、適切な温度の管理を施すことで米麹が完成するという内容で、参加者はそれぞれ自宅で2日間米麹を育てるプロセスを体験しました。

そして実習の際に米を蒸す時間などの待ち時間で小倉さんによる麹についての座学も開催されました。 麹菌をはじめとする発酵菌がカビの一種であるものの人体に良い効果をもたらすカビであること。また、こうした人体に良い効果をもたらすカビは湿度との兼ね合いなどもあり東アジアで特に多く存在すること。そして前途 の通り実習にて適切な温度管理を施すことが必要となる理由として、カビはそれぞれに活動しやすい温度があり、温度管理を誤ると麹菌の活動が不十分になり、更に他の人体に悪影響を及ぼすカビが入り込む余地を与えてしまうことなどの麹菌の特性に関する解説がなされていました。

小倉さんによるとこのワークショップを小倉さんが日本国内で開催するのも久々であり、先だってルーマニアで開催したワークショップではミシュランレストランの関係者も含めた100名以上の参加者も集まったそうで、日本の発酵文化に対する関心は全世界的に高まっているそうです。一方で発酵の体系的なメカニズムが十分に認識されているとは言えない表層的な取り組みに留まっているケースが多いという事で、小倉さんは現在海外に発酵のメカニズムを体系的に伝えることに力を注いでいます。 このようにフードビジネスサロンでは食の領域のスペシャリストの方を招いてのオリジナルセミナーを開催しつつ、メンバー間の情報交換やノウハウの蓄積を進め、新たなビジネスにつなげる活動を推進しています。

<プロフィール> 小倉ヒラク 1983年、東京都生まれの発酵デザイナー。早稲田大学文学部で文化人類学を学び、在学中にフランスへ留学。東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨県甲州市に発酵ラボをつくる。「見えない発酵菌の働きを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちと発酵・微生物をテーマにしたプロジェクトを展開。絵本&アニメ『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014受賞。2020年、発酵食品専門店「発酵デパートメント」を東京・下北沢にオープン。2024年12月8日まで開催中の「発酵文化芸術祭金沢―みえないものを感じる旅へー」では総合プロデューサーを努める。

川井美奈子 電通ではマーケティング部署にて食品、パーソナルケア商品等の調査や商品開発を担当、経理部門で予算制度。研修ナレッジシェア他を担当。2020年末に退社、翌年ライフシフトプラットフォームに参加し、各地の小さなそれぞれの美しい営みを応援したいという想いから日本古来の麻の利用、稲の多年草化チャレンジ、福島県浜通りの富岡町、棚田、コミュニティ農園など様々の場を訪ね小さな体験の機会を設ける。健康と幸せを共有する麹教室開設を準備中。

ライター河合 洋一