「寄り添うパートナー」スタイルでグランプリ受賞

 2022年2月21日。  この日に発表された第31回日本プロモーション企画コンテストにおいて、株式会社伊藤園の「お~いお茶『茶畑エクスプレス』キャンペーン」がグランプリを受賞しました。そしてその担当広告代理店欄にはニューホライズンコレクティブ合同会社(以下NH)なる見慣れない社名が。 今回、その作業に携わったNHプロフェッショナルメンバーの堀切禎史さんと柳下祐介さんに、受注の経緯や感想などを伺いました(写真上:伊藤園HPより)

COMPASS
プロジェクトプロデューサー、ビジネスプロデューサー

堀切禎史

堀切禎史さんのプロフィール:
電通時代は、営業・ビジネスプロデューサーとして、様々な広告キャンペーンやブランディングプロジェクト、ビジネスデザインやDXプロジェクトに携わり、クライアント企業の成長支援をしてきました。 独立後も、クライアント企業の潜在力/可能性を最大化すべく、電通時代に得たナレッジや人脈をフルに活かしたプロジェクトによって、多くの中堅企業のみなさまと伴走させていただいております。

GEESKBASE
プロジェクトディレクター、ストラテジスト、クリエーティブディレクター

柳下祐介

柳下祐介さんのプロフィール:
「よく効くこと。ながく効くこと。」をモットーに、国内外問わず、様々な業界/様々なクライアント企業団体の様々なプロジェクトに携わってきました。時代やトレンドが大きく変わっていく時こそ、本質を見誤ることなく、その企業/事業らしい進化を模索することが大事だと考えます。ブランド戦略、統合キャンペーンや新規事業開発における、ストラテジー開発からクリエーティブディレクションまで、「GROWTH PARTNER」としてプロジェクトを推進/サポートいたします。

顧客に寄り添い、まさに右腕となるチームでコンペ勝利

「伊藤園さんが、若者向けデジタルキャンペーンのコンペに参加するフリーの人材を探しているらしい」  二人がそんな話を耳にしたのは、まだ独立したばかりの2021年1月のことでした。興味を持った二人は案件を管理するNHや電通の承認を受け、1週間程度という短期間でチームを組成してコンペに参加しました。  わずかの期間で仕上げた提案書は課題整理から具体的な施策などに及び、百ページを超えるものでしたが、中でもとりわけ目を引いたのがパートナーとしての座組みについての言及でした。堀切さんいわく、パートナーに選ばれた勝因は「キャンペーン完了まで、私たちはチームMIGIUDE(右腕)として御社と一緒に伴走します」という決意表明によるもので、それは今回のコンペにフリーの参加を期待しているクライアントに対する二人からの回答でした。  この提案書にある「チーム右腕」とはどのようなことなのでしょうか?  今回のコンペに参加するにあたって、堀切さんと柳下さんは同じ電通出身のフリーランスの仲間を集めてチームを作りました。チーム組成のポイントは、①課題解決に徹すること、②高い機動力、③クライアントに寄り添うこと、だったといいます。全員がそれぞれストラテジーやPR、クリエーティブなど専門領域をもつプロフェッショナルからなるチームは、時々刻々変化する状況に対して全員が常に最適解を求める作業スタイルを徹底しました。  そしてそれを可能にしたのが、メンバーのフィーをしっかり認めてもらえたことでした。変動する予算の中でフィーだけは守ってくれたクライアントの深い理解もまた、チーム右腕の成功の要因だったのです。逆にメンバーはどれほど少額のものでも予算の最適配分について真剣に検討し、またクライアントに対しても忖度なく意見交換をしたといいます。  チーム右腕は1年間、キャンペーンの進行管理のみならず顧客社内向け資料や新パッケージのアイデア出しなど、まさにクライアントの右腕として活動する中で結束を固めてきました。

お茶畑を見てひらめいた着想、たった1枚のシートでプレゼン

 今回グランプリを受賞した、おーいお茶「茶畑エクスプレス」キャンペーンは、摘みたての生の茶葉から自宅でお茶を作れ!というミッションのもと、それに挑戦する24名の茶レンジャーをTwitterで募集するというものです。当選者には『鮮度体験セット』が伊藤園契約茶畑から直送されるのですが、摘み立ての生茶葉なので、当選者はセットが着いたその日にお茶作りにチャレンジしなければなりません。まさに待ったなしです。  セットにはお茶作り工程マニュアルも同梱されていますが、生の茶葉を蒸熱、冷却、さらに乾燥、手揉みをするといった工程は一筋縄ではいかないようで、youtubeの伊藤園公式チャンネルでは伊藤園社員の皆さんが(マニュアルなしで)お茶作りに奮闘する動画が人気を集めています。  このキャンペーンの着想を得るきっかけとなったのは、二人が静岡県にあるお茶の畑を実際に見に行ったことだったといいます。そこで生産者の皆さんと触れ合い、また伊藤園のお茶作りの技術へのこだわりを目の当たりにしました。摘んだ生茶葉は24時間以内に焙煎しなければならない……そのプロセスに感動した二人が、それをそのままコンテンツ化して消費者の皆さんに届けてはどうか、という発想に至ったのは自然な成り行きで、パッと絵が浮かんだそうです。  二人はその着想をその場で1枚のシートに仕立て、メンバーにEvernoteで共有しました。それをチームで精査した上で担当者の方に見せたところ、即決。キャンペーンのアウトラインが決まった瞬間でした。 時間のない企画立案中に、思い立ってお茶畑を見に行った自由さもフリーランスチームの良さ、と二人は振り返ります(写真下:伊藤園HPより)

企業人とフリーランス、バランスのよい働き方が課題解決の幅を広げる

 今回のキャンペーンの成功要因について、堀切さんは高いクオリティで寄り添えたことが大きかったと言います。 「顧客の課題に忖度なく寄り添える自由さとフットワークの軽さを持ちながら、全員が電通時代に培った経験に裏打ちされたプロフェッショナルだったということです。顧客からフリーランスに直発注する場合、クオリティへの不安があるものですが、いい形でグロースパートナー的な寄り添い方ができました」  柳下さんは、NHのような仕事のあり方がもっと一般企業にも浸透することに期待しています。 「世の中をあちこち見渡すと、キラッと光る個性や熱い思いを持っていながら、そのよさを打ち出せていない個人やチームがあります。それに対して企業同士ではなかなか寄り添うパートナービジネスになりづらいことも多いのですが、NHメンバーを中心に、安定した委託業務と今回のような個人事業をバランスよく持つチームだったことで、今回寄り添う形のパートナーになれたと思います」 「我々は個人事業主ですが、例えば企業においても『サラリーも半分、労働時間も半分』というような契約形態があれば、その社員はその企業で培った経験を元に、残りの半分の時間を活用してフリーランス的な働き方ができるようになります。それによって、個人ができる顧客や社会の課題解決・価値創造の幅も広がっていくのではないかと思います」  最後に、今回クライアントとしてキャンペーンを成功に導き、グランプリを受賞した株式会社伊藤園の水野さん、角野さんからもコメントを頂きました。 「私達は、お~いお茶というロングセラー商品がコモディティ化し、競合他社の商品との価格競争に陥っていることに強く危機感を抱き、お~いお茶が未来に渡り輝き続け、売れ続けるブランドであるために、新しい観点でのブランディングが必要だと感じていました」 「そんな時にチーム右腕の皆さんとお会いしました。チームの一人一人が私達の声にきちんと耳を傾け、我々が持ち合わせていない視点で意見とアイデアを出してくださり、一緒に伴奏しながら理想の企画を形にしてくださる、正に右腕となってくれました。最も印象的だったことは、皆さんが私達と一緒に何度も茶畑や静岡の開発部門に足を運び、お茶を学び、とことん好きになってくださったことでした」 「様々なことに興味を持ち、互いに刺激し合い、心から楽しみながら仕事をすることができたことで、今回の企画が大成功したのだと確信しています。チーム右腕の皆様、本当にありがとうございました!」

取材と文山内龍介